2015年10月12日月曜日

福祉産業の構造

日本経済がこの世紀末の不況を「超えて」、新しい段階へと飛躍を遂げるためには、民間の「非営利組織」(NPO)の存在がますます重要になりつつある。こうした組織の存在意義は、もちろんさまざまな角度から論じることができるが、それをさしめたり経済的諸問題との関わりに限定したとしても、その意義ぱ大きい。

たとえば右にみたシルバー産業の創出という点についても、それがトータルな高齢者福祉システムの一貫として位置づけられるものである以上、公的福祉を担当する行政だけでなく、広く福祉を現実において支えているボランティアーグループなどの非営利組織との関わりを抜きに考えることはできない。

たとえば、名古屋市で実施されているホームヘルパー事業(「なごやかヘルプ事業」)は、現在一四〇〇人の主婦を中心にしたスタッフによって担われている。それは、地域住民による訪問介護のボランティアーグループ(二五人)から始まった「地域福祉を考える会」の活動を基盤とし、そこに行政が「社会福祉協議会」を通して十数年にわたるボランティア活動の実績のうえに資金援助等のかたちで参加するという歴史を経て、現状に到達したものである。

「福祉社会に対応する税制改革協議会」(連立与党)による社会保障の将来展望に関する報告書においても、北欧に倣った介護システムの構築のためには、ホームヘルパーの大幅な増加やシルバーパワーを活用した「職業的ボランティア」の創設など、介護を支える「人づくり」がきわめて重要なポイントになるとして、その推進を打ち出している。

行政による公的福祉、ボランティア及びそれを中核とした非営利組織や第三セクターによる福祉活動があり、これをとりまくかたちで私企業による人的サービスを伴う福祉産業が存在する。そしてさらに、その外周に各種の介護器具や補助用具等を供給する福祉関連産業が存在する。こうした重層的でトータルな社会福祉のシステムを拡充させていくということなしに、企業による「福祉」分野への参入も成功しえない。