2014年12月12日金曜日

コミュニケーション能力不足の社員は危ない

特に早期退職者を募集する場合、最も標的になりやすいのは中高年正社員である。成果主義型の賃金制度が導入されたり、実力主義の出世が増えたりしているとはいっても、依然として中高年正社員は様々な面で優遇されている。企業から見ると、中高年正社員はコスト的に高く、生産性に見合っていない賃金を得ている。そのためいリストラするのであれば、真っ先に対象となるのは中高年正社員である。また、世間も給料の高い中高年正社員に同情的でないことは注目していいだろう。

例えば、『電波利権』(新潮新書)の著者である池田信夫氏は、NHK地方局長が2000万円近い給与をもらいながら、主な仕事はライオンズクラブの会合に出たり、地元企業とのゴルフコンペに参加したりするというもので「若年世代を弾き出しているのはこういう年代だ」と批判しているが、こんなコメントは世間に大いに支持されることだろう(『働かない中高年リッチ解雇せよ「正社員」保護しすぎ論が台頭』2008年12月20日J-CASTニュース)。

「年齢」についで明確で合理的な判断基準は「人事評価」である。人事評価さえ正しければ、たとえリストラを実施しても、職場の雰囲気は悪くならない。その意味では、人事評価をきちんと行った上で、職場全員が納得できるような「普通解雇」を厳格に実施する企業は増えると思われる。厳しい人事管理をやる外資と同様に、日々の仕事の成果を評価することで、情け容赦なくクビを切る日本企業が続出するということだ。これは相当シビアに行われる可能性が高い。先程述べたように、個別に解雇するのは「普通解雇」であって、整理解雇ほど厳しい要件は課されない。

最もドラスティックな人事評価による普通解雇となると、四半期ごとに営業成績などの成果を測るということになるのかもしれない。日本人らしい少し穏健なものとなると、人事評価をきちんと行い、所定の成績をクリアできない正社員は、1年程度の経過観察を行い、それでも成績が改善されない場合、解雇されるということになるのだろう。これまでは「人事評価なんて、どうせヤラセだろ。給料にも出世にも反映されないじゃないか」という意見を述べる若手正社員が多かったが、今後は人事評価によってクビを切られてしまう恐れまで出てくる。

それでは、一体どれくらいの企業が「年齢」「人事評価」を基準にしてリストラを断行するだろうか。おそらく、そんなことができる企業はごく一部である。特に、大企業になればなるほど、そんな大胆で合理的な判断をできないだろう。実際、日本企業では思い切った差をつける成果主義は実現されておらず、正社員間で出世や給料に大きな差がついているわけではない。特に、労働法の遵守に敏感な大企業の多くは優柔不断で、メリハリのつく人事評価などできるとは思えない。そのため、なかなかリストラ対象を見つけられないとか、本来はリストラされるべきではない人が会社に嫌気を感じて去っていくとか、中高年リッチ正社員だけは粘り強く辞めないといった事例の方が多くなるかもしれない。