2015年3月12日木曜日

細胞の構造の違い

細菌の細胞も、私たちのものと基本的には同一である。細胞に必要な物質を取り込んだり、不必要なものを排出したりする細胞膜に囲まれて、遺伝子であるDNAから成る染色体や、酵素や毒素のようなタンパクを作るのに必要なリボソームのような構造が存在する。異なるのは、染色体やリボソームの構造が少し違うということのほかに、細胞膜の外側に細胞壁という構造が存在することである。細菌は、原則的にこの細胞壁がないと生存できない。

ところで細菌は、細胞の構造の違いから、さらに二つに分けられる。専門用語では、これをグラム陽性菌とグラム陰性菌という。このグラムというのはデンマークの研究者の名前であるが、グラム陰性菌の代表として大腸菌が、グラム陽性菌の代表としてブドウ球菌が挙げられる。

いま細胞膜を薄い布に、細胞壁を龍にそれぞれたとえてみよう。するとグラム陰性菌は、薄い布の袋を中に容れたひ弱な龍の外側を、さらに別の薄い布の袋で覆ったもの、陽性菌は薄い布の袋を丈夫な龍に収めたようなものと考えられる。つまりグラム陰性菌には、薄い細胞壁の外側に、さらに細胞膜と似た脂質二重層という脂肪を主成分とする、外膜と呼ばれる膜が存在する。