2014年9月11日木曜日

地方債の累積

大蔵省は、「隠れ借金」なる言葉を、公的には用いていない。「予算説明資料」は、「今後処理を要する措置」という言葉によって表現している。これには、一九九四年度末現在でみると次のような「借金」がふくまれている。①国民年金特別会計への国庫負担金の未払い・五九四一億円、②地方財政対策改革による地方交付税特別会計借入金・五兆四四二二億円、③地方財政対策にともなう後年度負担・三兆一三〇八億円、④国鉄清算事業団からの継承債務の償還延期・四八二四億円、⑤自動車損害賠償責任再保険特別会計からの受け入れなど・三兆二四一三億円、⑥国鉄清算事業団の債務残高・二六兆円。したがって「今後処理を要する措置」として、大蔵省が事実上「隠れ借金」であることを認めている負債額は、三八兆八九〇八億円である。

大蔵省はこれとは別に「参考」として、①過去に国債整理基金への定率繰入を停止した累計額・二一兆七〇七〇億円、②地方交付税の特例措置にかかわる後年度清算額・一兆三四九八億円の存在を認めている。なぜ、この「債務」を「今後処理を要する措置」から除き、たんに「参考」としているのか、理由は定かでない。しかし、国債整理基金への定率繰入は、内閣の自由裁量事項ではなく、法定された義務である。また地方交付税は、所得税・法人税・酒税収入の三二パーセントと消費税収入(消費譲与税分を除く)の二四パーセントを原資として、自治体に一般財源として交付することが義務づけられている。いいかえれば、地方交付税の原資分は、自治体の財源である。したがって、特例措置にともなう後年度清算額は、中央政府の債務そのものとなる。

こうして、一九九四年度末現在、未処理のまま放置されている「隠れ借金」の累積額は実に、六一兆九四七六億円となり一般会計歳入歳出額の約九〇パーセント近くにおよぶ。加えて九五年度予算では、約六兆円の「隠れ借金」が新たに積み上げられた。国債残高二二一兆円に加えて「隠れ借金」六八兆円の現実を、どのように考えるべきだろうか。借金に足を取られたドロ沼のような財政状態というほかはないだろう。しかし、政治家の間からは、この現実につい七の危機感は、少しも伝わってこない。もともと、歳入予算における税収は「見積額」にすぎない。歳出に合わせて経済成長率を「高め」に見込み、歳入・歳出の帳尻を合わせておくことも可能である。だが年度途中で歳入欠陥が明らかになれば、補正予算によって税収を減額し、その補填を赤字国債に頼る以外にない。借金漬けの財政は、ますます「底なし」の悪化状況に陥ることも予測される。

先でみたように、中央政府の予算は、中央省庁自らによってそのすべてが消化されるわけではない。自治体への補助金として移転支出され、さまざまな事業となって消化されていく。このばあい、自治体は自主財源から補助事業の自己負担分を支出することに加えて、財政投融資資金を主たる原資とする地方債を発行して、自己負担部分に充当する。とはいえ、「地方公共団体にたいする国の財源措置の一部」といえば聞こえがよいが、地方債は、補助事業の実施に組み込まれている。中央省庁の側からするならば、地方債の発行を手当てすることで、補助事業予算を消化できる。