2015年1月15日木曜日

無料ビジネスの本質

いまの話は、ぴとつの企業のなかの10の部署での話だとしても、ほぼ同じように考えられます。ぴとつの企業グループの10の関連企業の話だとしても、採算が悪くて将来性がない1~2社を整理してしまうという結論になりやすいでしょう。消費が伸び悩むことで、不況(消費不況)になって経済成長が止まってしまう(あるいは、伸び悩む)と、経営が苦しくなった企業の多くは、一部の労働者の賃金を下げて対応しやすいということです。一部の企業が倒産することでも、そこで働いていた人たちだけが、大幅に所得を下げるという結果が生じます。

そのうえで、コスト削減で経営を維持できた企業は、消費者への販売を回復させるために、値下げをしやすい。値下げをしない企業の多くも、資源価格高騰などに応じた値上げはしない。巧みな価格戦略を操って、積極的に値上げをするTDLやマクドナルドのような企業は例外的で。実際に日本全体では、不況がモノやサービスの価格をじわじわと下げてきた。だからデフレ不況になっているわけです。このパターンでのデフレは。消費者を勝ち組と負け組に分けやすい。賃金さえ維持されれば、モノキサービスは平均的に前より安く買えますから、実質的にみて所得は上昇し、生活水準を高められます。この点に注目し、「デフレはいいことだ」と主張する人が出てきたりします。そして、なんらかの既得権に守られて、自分の所得は下がりにくい立場の人たちがこれを支持したりします。

逆に、リストラ、賃金力ット、賃金が相対的に安い非正規雇用の増加などで、大幅に低い所得になってしまった人たちは、デフレで実質的におカネの価値が上がっているとしても、焼け石に水。実質でみても、所得が大幅に下落する人たちが出てきます。さらに、非正規雇用の比率が高まり、かつ、売上や利益を伸ばしにくい構造の業種が増えることで、年齢や経験を重ねても賃金が伸びにくい人たちが増えます。当然ながら、生活苦を感じる世帯が増加します。問題は。そういった世帯がどの程度の比率になっているかです。日本銀行が3ヵ月ごとにおこなっている「生活意識に関するアンケート調査」の、2010年6月から2011年3月までの結果をみると、「1年前と比べて収入が減った」と回答している人が5割前後、将来について「1年後は収入が減る」と予想している人が4割弱となっています。

しかも、これらはすべて、東日本大震災の前におこなわれた調査です。リーマンショックのあとの調査では、「収入が減った」との回答が6割前後、将来「収入が減る」との予想が4割強(ひどいときは約5割)でしたから、少し改善に向かっていたのですが、震災・原発危機・電力不足などの影響でまた悪化するのは必至です。自分の1年前と現在の所得につリで、誰もが3ヵ月ごとに正確に回答できるかどうか疑問が残る、また、控え目に答えようとする心理も働きそうだ、などと考えると、このアンケート調査をそのまま信じるのも危険です。しかし、消費においては消費者の心理こそが重要なことも多く、本当は所得が増えていても、減ったと思い込んでいれば、消費にはマイナスに働くでしょう。

ある程度の誤差を考えても、日本の3世帯に1世帯(あるいはそれ以上)は、所得が伸びないことを前提に消費をしているといえそうです。あくまで感覚的な判断ですが、どうみても、消費不足を悪化させそうな数字です。なぜなら、いまはおカネに余裕がない人におカネを貸すことで、消費を増幅させる機能を果たしてきた金融ファイナンス)のしくみが、いまや大幅に機能を低下させているからです。日本では近年、消費者金融(サラ金)に対する規制が厳しくなり、おカネに余裕がない人がおカネを借りて買い物をするといったことが、どんどんむずかしくなっています。なお、消費者金融業界が、厳しい規制と相次ぐ訴訟とで弱体化してしまったことは、最大手だった武富士が経営難に陥り、2010年9月に経営破綻したことに象徴されています。