2014年4月17日木曜日

健康長寿社会

さきにも少し触れたように、長野県の健康が注目を浴びるようになった。私は、一九八〇年代後半にも長野県について取材したことがある。そのときの将来予測では、今後は長野県の老人も都会人化し、以前のような、粗食に甘んじ運動(労働)に精を出すという生活習慣が崩れるだろうから、結果的に平均寿命の順位も下がるだろうとしていた。
 
ところが、案に相違してというか、長野県の平均寿命は、その後ますます順位を上げ、一九九〇年度には、男性一位、女性四位となった(参考までに九四年度の長野県の平均寿命は、男性七七・九三歳、女性八四・一三歳)。単に平均寿命の長短だけで、健康度の優劣を論じることはできないが、前述したように、長野県は同時に一人当たり老人医療費も全国一低い数字を維持している。これは健康寿命が長いということを意味するのではないか。

では、なぜ長野県がそれを実現することができたのだろう。その理由を自分の目で確かめてみたいと以前から思っていたところ、先日、長野県を訪れる機会を得たので、実際に訪れて得た感想と多少の考察をまとめてみたい。老人医療費が低く、平均寿命が長い。これはつまり、「健康で長生き」という理想的な状態にかなり近いことを意味する。さらにいえば、これを発展させ、「日本全国を長野県」にすることができれば、日本の医療費の将来展望もかなり明るくなるはずだ。

長野県は、人間が健康的に暮らしていくのに、地理・気候、人口構成、あるいは保健・医療・福祉環境のすべてにおいて、他の県と比較して格別に恵まれているわけではない。だとすると、もし、長野県に何らかの「健康長寿の秘訣」があるとするなら、その方法論は、広く他の地域にも応用することが可能かもしれない。